第14回東京国際ブックフェア

出展ブースは、さっと見学。『2007年 本の学校 出版産業シンポジウムin東京』の講演、90分×3本を拝聴。さすがにハードだった。スピーカーとそのメモ。

1.第1部「書店に未来はあるのか!―大型書店から街の本屋まで、激変期の書店経営者が徹底討論」 10:30〜12:00
大型書店、地域密着書店の経営者が一堂に会し、出版業界の問題と、書店の未来について、それぞれの立場から発言、議論する。
コーディネーター : 田辺 聰氏(日本書店大学学長・「本の学校」運営委員)
パネリスト : 大垣守弘氏(京都・大垣書店)、世良與志雄氏(広島・フタバ図書)、高須博久氏(豊橋・豊川堂)、高野幸生(TSUTAYA

*テーマ別にパネリストがコメント

■時代趨勢の書店大型化
・高須氏 (元日書連副会長として)加盟店6,000軒の70%=4,200軒が40坪以下で、雑誌の低迷が顕著。どのジャンルがどのように低迷しているのか探るのがキー
・世良氏 外部環境の変化ゆえのこと。生き残れるのは、A.専門的・地域密着・不動産保有 B.ドミナント出店によるシェア確保。可処分時間の奪い合い。顧客への価値訴求のための大型化はとめられない。単独専門店の生き残りは厳しい。
・高野氏 顧客へのメッセージ、店舗の雰囲気を重要視
■IT時代への対応
・高須氏 オンライン書店の利便性に対応していかなくてはならない
・大垣氏 ehonを活用・囲い込みを行い、今後は、法人営業や外商で需要を掘り起こす
■書店の活路をひらく戦略
・大垣氏 顧客満足につながるものの、ランクアップのための売上・店舗拡大戦略を大手出版社が指向させている(私見
・高須氏 雑誌特定銘柄を「大量に売る店」と「確実に売る店」の正味バランスを考慮してほしい(どうやって??私見
■現状を打開する新ビジネスモデルへの提言
・世良氏 古書併売、Powell'sを引用。興味深かったのが、ブックオフ坂本氏辞任により、今まで業界として創業者「個人」を悪とみてきた「ムード」があったが、マッキンゼー出身の新社長による利益/効率を重視の経営がすすみ、新刊書店が悪化することを真剣に危惧されていた。表舞台にどんどん出てくれば、状況も変化してくるだろう。
・高野氏 ケータイ小説の隆盛で、新たな客層を獲得。今後も、書店に来ていない層の行動把握により、新たな需要を掘り起こす。
■まとめ
・高須氏 公取は再販撤廃の方向性を推し進めていくので、粗利の確保が急務。27%ほしいが、まず25%。
・世良氏 業界全体のムダが多い。1.5ヶ月前に新刊カタログを発行、イニシャルオーダーを発注して、所謂見計らい配本をなくせば、返品率は確実に下げることができる(実践しているコミックは10%超程度)。(これはとうぜん取次の出番・私見

2.【第2分科会】「雑誌で支える書店経営―『私はこうして雑誌売上を伸ばしました』」(日本雑誌協会共催) 13:00〜14:30
「雑誌低迷」という言葉に騙されてはいけない。自分の店に合う雑誌を探し出す努力、店頭陳列の工夫、顧客とのコミュニケーションなどで売上は必ず上がる。すぐに使える成功事例の報告を通し、書店経営の大きな柱である雑誌販売について改めて見直す。
コーディネーター : 名女川勝彦氏(文藝春秋
パネリスト : 伊藤清彦氏(さわや書店)森岡葉子氏(くまざわ書店

*パネリストが個別にスピーチ、その後質疑応答。いろいろあったので、絞ってメモ。

森岡
ネガ要因
・ムックの点数の多さ、返品率の高さもさることながら、単品管理ができないので、売り切りの機械損失が把握できない
・特定の雑誌の売れていた特集でさえ、売れなくなってきている
売れるためのtips
・数の管理の徹底
・小部数誌の陳列の工夫
・情報収集(スタッフ・レジ・顧客・次号予告)とその共有
・売れた雑誌は、次号が出ても、期限まで陳列・販売
■伊藤氏
・「大衆」はいなくなり、細分化はどんどん進む
tips(ただし、中規模店以下のための)
・毎日集計、都度平台組み換え
・売れた雑誌は、次号が出ても、期限まで陳列・販売
・動く早さを見て、銘柄によってはシュリンクして差しに
・バックナンバー常備銘柄をよく考える
・ムックこそ鮮度管理
・平積みは、五冊ずつ
・付録組み、開店から完璧を求めない
・子育て雑誌の版型は文庫4点分なので、合うものを併売

■個人的メモ
・書籍売り場に雑誌をもってくるより、雑誌売り場に書籍をもってきたほうがやりやすい
・某社の質問:「綴じ込み付録と投げ込み付録で、売上・売り場にインパクトはあるかどうか?」
→ご両人とも明らかな違いはないそうで、やはり「クオリティ」とのこと。そうだよな。

3.【第3分科会】「地域密着と古書新刊併売―米国独立系書店の生き残り戦略」 14:40〜16:10
米国の書店は世界最大の書店バーンズ&ノーブルや、アマゾン・コムとの熾烈な競争にさらされているが、そんな中で新刊、リメインダー、古書を混売して地域住民から圧倒的な支持を集めている独立系書店パウエルズブックス。マイケル・パウエル社長にその戦略を聞く。
http://www.powells.com/
コーディネーター : 星野渉氏(文化通信社・「本の学校」運営委員)
パネリスト : マイケル・パウエル氏(米パウエルズ・ブックス)、世良與志雄氏(フタバ図書

*星野氏からPowell'sのプレゼン・Q&Aの後、質疑応答。以下メモ。立ち見もでるほど!

・新刊、古書それぞれにユニークバーコードを付与して管理
・1994からEC開始。現在30%の占有
・返品率11%
・少数精鋭(従業員500人は全員フルタイム、正社員かは不明)で、新しい時代の顧客を開拓
離職率は15%、3週間のOJT後、1年かけて専門知識を習得
・古書は、顧客の選択肢が増えることと粗利が高いことで、扱うことに
・図書館への営業は、ホールセラーがほぼ独占しているので、おこなっていない
・書店、流通、出版社三者のパートナーシップを強め、チャレンジし続ける
・陳列は、まだまだ改善の余地あり
・TechnologyをCreativeに
・変化への対応
・世界の言語を扱う店をめざす