いま、新聞に期待すること(2007/4/6)

先週の金曜日、「新聞をヨム日」の4月6日に行われたシンポジウムを聞いてきました。今日4/14付朝日新聞朝刊に当日の様子が1ページで紹介されているので、興味があるかたは、そちらをご覧ください。
このシンポジウムは、パネルディスカッションが目的で応募した。メンツがとても豪華。

コーディネーター
大石裕氏・慶應義塾大学法学部教授
パネリスト
福原義春氏・資生堂名誉会長
平野啓一郎氏・作家
村上憲郎氏・グーグル代表取締役社長
岡部直明氏・日本経済新聞社上席執行役員主幹

抽選500名で運良く当選。同年代が結構いるのかと思いきや、60代以上が4割から5割くらいいた。平日の昼間というハンデがあるにせよ、よくヨム読者は、やはりこの年代なのかな…と。告知も朝日新聞でものすごく小さかったし。
内容は、まだすべてアップされていませんが、こちらでも読めます。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070412ddm010040132000c.html

文字になってしまうと分かりづらいですが、
新聞人(岡部氏)vs 消費者(福原氏)+作家(平野氏)+ウェブ(村上氏)
というおもいきっり1対3の構図になっていた。岡部氏は、ずっと供給者目線でちっとも議論がかみ合わず。その点、福原氏の消費者目線でのものの捉えかたには非常に感心。平野氏は、その場の役割をうまくわきまえ、颯爽としていた。

スクープ報道に関するやりとりが、1対3の最たる部分。

 岡部氏 情報を発信する側も受け取る側も多様になってきた流れを変えるのは難しい。その中で新聞がどう生きるかというと、先ほどの解説力や検証力と併せて、日々の地味な仕事の積み重ねから生まれてくるスクープの役割が大きくなっていると思う。

 村上氏 読者としては申し訳ないが、スクープにはあまり期待していない。歴史的な事実を掘り起こすこともあるが、通常のスクープは他紙より6時間ほど早く1面トップに載せて万歳という感じだ。それよりも一般の読者は科学的な裏付けや新聞社の長年の蓄積に基づく深みのある記事を期待している。

 岡部氏 6時間後には他社が書くから無意味というのは少し違う。例えばみずほ銀行の統合をスクープした時も、その過程で金融システムの問題などをつかみ、解説記事の厚みにつながった。取材競争をやめたとたんに検証力、解説力、提案力というメディアのパワーが落ちる。

 平野氏 その通りだと思うが、例えば皇室のご懐妊報道で早さを競うのはどうでもいいという部分があり、冷ややかに見てしまう。一方で、ゆとり教育イコール学力低下というような短絡的な言説の中で見落とされていることを取り上げるのは一種のスクープだと思う。さらに歴史的な事実とかに関するスクープへの情熱は失ってほしくない。

 福原氏 私も半日早く知ることに意味を感じない。二つの会社の社外取締役を務めている立場で言うと、スクープ競争が過熱した結果、新聞報道が既成事実となり、企業の活動に影響をもたらす可能性を心配する。

この後、岡部氏による回答がなかったのが非常に残念だが、「速報」だけのスクープは本当に意味がないし、平野氏のいうような概観し、深堀りしたようなスクープは最近では記憶がない。それをもっと強化してほしいのと、基調講演で堀田力氏も言っていた、

社会参加のあり方について情報を提供し、広い意味での「パブリック」、公的なものの形成を担うことだ。

この役割をきちんと果たしていくべきではなかろうかと。ただ『新聞社』を読んで、テレビとの繋がりが深いだけに、どこまでそれができるかどうか。読売・朝日・日経・産経とちがって、毎日新聞は、TBS株を1%しかもっていないので、いちばんテレビ局から独立性は高いので、一番そういったことができる新聞なのかもしれない。

逆説的だがグーグル村上氏は、クロスメディアという点で新聞は、まだまだできる環境があるのに活用しきれていないという指摘もあった。たしかにスケールメリットをいかせば、消費者の「可処分時間」に食い込みやすいはず。もちろん他メディアであっても、「可処分時間」をいかに費やして、満足してもらうかを考えていかなくてはならない。

非常に満足のいくあっという間の濃い二時間だった。