アメリカ出版研究会(2008/06/28)

franken2008-06-29

メインスピーカー・名女川勝彦氏(文藝春秋)「わが国の雑誌販売の問題点」
http://www.bunshun.co.jp/
以前紹介したプロジェクトのメンバーでもあるかた。どんな考察がうかがえるのか楽しみにしていたのだが、新たに得るものはなく、内容もなんだか切なくなりました。レジュメ最後のパラグラフを転記します。

●雑誌再建のための課題
<わが国の出版事情>
欧米の書店の多くは雑誌を置かない。雑誌は新聞スタンドで売られることが普通である。書籍と雑誌の両方を販売する形は日本特有とはいえないが、おそらく世界的には少数派のようだ。しかも、中小書店の経営は雑誌売上に依存しているので、雑誌不振は書店経営の悪化に直結する。書店経営の悪化は書籍販売の弱体化にも直結する。
<自動配本システムの硬直化>
80年代以降、日販・トーハンを中心にコンピュータの導入を図り、雑誌の自動配本システムが構築された。それまで番線担当者の手書き伝票で配本していた仕組みを廃したことで、物流部門で約1,000人の人員削減を図った。
自動配本システムは、過去の販売データを基に新刊雑誌の配本を自動化する方式である。しかし、過去の販売データは、必ずしも現在と将来の動向に適合するものではない。実態との食い違いを調整する機能として配本部数を変更する「定期改正」が必要になる。いわば、自動配本システムは「定期改正」という調整機能と両輪をなすこおで機能するシステムなのである。
ところが、現在の雑誌不振の原因の一つとしてこの自動配本システムが槍玉に上がっている。書店は、配本縮小の元凶だという。いつの間にか配本部数が減らされ、配達部数も確保できなくなっている、という。また、定期改正を要求しても応えてくれない、ともいう。
自動配本システムは書店の仕入れ感覚を鈍感にすると同時に、調整機能に人員を割かない販売会社の政策により、雑誌販売部数の低下をもたらしている。
<書店の雑誌販売技術の喪失>
雑誌販売現場はアルバイト、パートに依存。雑誌特有の販売技術が伝承されていない。
<中小書店の廃業>
効率販売を目指した販売会社・出版社営業の大型書店、大型チェーン店への傾斜。
<編集能力の低下>
世の中の変化を掴みかねている編集現場。新人作家発掘の意欲と能力の低下。

ゲストスピーカー 柏田花氏(淡交社)「雑誌『なごみ』について」
http://www.tankosha.co.jp/
http://www.rakuten.ne.jp/gold/tankosha/
専門的な話で興味深く聞けた。日本文化は、深いなぁと。
33%の読者が年収1,000万以上(世帯かどうかは不明)とのこと、さすが。


画像は、『THE NEW YORKER』2008 6/9.16合併号表紙。
隣が本屋なのに、amazonの荷物を受け取るの図。
http://www.adrian-tomine.com/

『ランキング依存が止まらない〜出版不況の裏側』のウラ側

――NHK「クローズアップ現代」ディレクターに聞く@でるべんの会
http://deruben.exblog.jp/8363532/

オンエアにおける印象的な二つの場面が、寺岡氏と進行役の石橋氏ともに共通していたというのが印象的だった。ひとつは、ハンディによる抜き取りチェック?の画。ふたつめは、本屋大賞の売行経過の画。
前者は当然だと思うし、後者は複雑な思いも分かるけど、これもしょうがないのかな、と。主催者に責任の一端を負わすのは筋が違うでしょう。

昨日の話には出てなかったけど、今月からamazonオリコンに調査協力してましたん。
http://www.oricon.jp/news/data/20080604.pdf
決算説明会資料見ればわかりますが、乱暴にまとめると、
年商5億以上の出版社850社×年108万の利用料=9.18億!?
http://www.oricon.jp/ir/data/20080520.pdf
22ページ以降をチェックされたし。